最後の勇姿

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 ベルリンの観光名所、ベルリン大聖堂の通りをはさんだ向かい側に、ゴツい銅の色をした四角い建物がある。これはPalast der Republik(パラスト・デア・レプブリーク=共和国宮殿)。これは1976年に国民のためのコンベンションセンターとして建てられたが、その後建物にアスベストが使われていたという理由で長い間封鎖されていた。そのため、宮殿という言葉からはほど遠い、さびれた感を放っていた。いってみれば、どでかい廃墟が街の中心地にあるのだ。それで、この建物をどうするかずっと協議が続いていた。

 それがようやく、この宮殿を取り壊し、新たなコンベンションセンターを造るということに決まり、この2月から撤去作業が始まった。いったいいつこの建物が完全に姿を消すのか知らないが、自分がベルリンに来た頃にあった歴史的建造物がなくなったら、感慨深いものがあるだろう。ベルリンの歴史を、ちょっとだけでも自分も共有していたような、そんな感慨。

 でも、ここの地盤は地下水が非常に多いらしく(なんといっても川のふもとに建っているものだから)、撤去作業は難航する見込み。聞いたところによると、この重厚な建築物がなくなってしまったら、そのはずみで地盤が上がってしまうとかなんとか。スローなベルリンのことだから、私がベルリンにいるうちはこの宮殿がなくなることはないかもしれないな。

2022年11月

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