誌面レイアウトのジレンマ

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ベルリーナーも知らない隠れ名所が続々と

 "111 Orte in Berlin, die man gesehen haben muss"(「ベルリンで見ておくべき111の場所」って感じか。「見逃すな!ベルリン隠れ名所111」とか超訳すると、内容によりフィットする気がする)という本をいただいた。

 これは、一般的なベルリンのガイドブックではない。掲載されているのは、ベルリンにある有名・無名の111ヵ所のスポット。
 いずれもかなりマニア向けで、初めてベルリンに来る人にはピンとこないかもしれない。だけど、ベルリン在住者やベルリンをよく知る人にとっては、きっととても面白いと思う。

 私はこの本の何がいたく気に入ったかというと、写真。
 一つのスポットごとに見開き2ページで紹介されていて、左ページが文章、右ページが写真というレイアウトなんだけど、その写真が素晴らしい。

 文章を補うための写真ではなく、写真だけで一つの作品として成り立っている印象を受ける。写真点数も、1ヵ所につき1点のみドーンと裁ち落としで使っていることが多く、それもまたいい。

 ドイツの書籍・雑誌のレイアウトは、こういう傾向が強い気がする。つまり、アーティスティックな写真を大きくドーンと使う感じ。

 これ、日本じゃなかなかできないんだよね。もちろん出版物のコンセプトによるんだけど、一般書では難しい。

 日本だと、説明的な写真を何点も細々とたくさん載せるのが好きなのよ。
 例えばこの本で紹介されているスポットの一つに、湖底トンネルがあるんだけど、そこの写真はトンネルへ下る階段の一部と、その階段を自転車を引いて下りている人の足、タイルの壁が写っているだけ。
 もしこれが日本の本なら、トンネル入り口、中の通路、細部など、細々と撮って載せるんじゃないかな。

 この写真だけだと、トンネルの全容はわからない。でも、逆にすごく興味をそそられる(行ったことあるけど)。

 確かに読者の人は、いろんなカットを見たいんだろうと思う。でもコンセプトによっては、こういうデザインがあってもいいんじゃないかと思う。

 私は、できるだけ写真をバーンと使いたい方。
 雑誌に書かせていただくときは、その雑誌の編集方針に従うのでレイアウトには口出しはしない。
 だけど、自分の著書ではいろいろと意見を言ってみる。幸い、編集者さんやデザイナーさんと意見が合うことが多く、好きなテイストに仕上がることが多い。11月に出た『レトロミックス・ライフ』も、大胆に載せる写真と、細かく説明的に見せる写真のメリハリをつけるようにして、すごく好きな1冊になった。

 独りよがりはいけないけど、"111 Orte in Berlin, die man gesehen haben muss"のようなレイアウトの本がもっとあってもいいんじゃないかと思う。
 その一方で、「写真点数が多いと、お得感がある」という価値観があるのも知っている。
 今は本が売れないから、みんなどうしても安全パイを選んでしまうんだけどね......。

コメント(4)

いつも更新を楽しみにしています!

日本で本のデザイナーいた者です。
ベルリンの本屋さんを巡ってみて、同じことを思いました。
本を作るときのスタンスが元々違いそうなので仕方ないかもしれませんが、
タイトル一つ取っても、日本では「上の方にして下さい」とか限定されることも多く、ドイツの自由なデザインで本を作れる環境を羨ましく思ってしまいます。
「普通にしてください」も、よく言われます。
普通って…普通って…と、もうジレンマでした

新しい方向性を提案していくのも仕事の一つなので、それを説得できるくらいのモノを作れるように、色々吸収して帰りたいと思ってはいますが…

どうしても、いいなぁと思ってしまいます (^^;

ほわいとさん、
こんにちは。コメントどうもありがとうございます。

本のデザインをされていたなら、相当ジレンマがあったでしょうね……。
日本の書籍は帯を巻いたり、表4のISBNバーコード部分が異様に大きかったりして、
ただでさえデザインの制約が大きいと思います。
「普通にしてください」っていうのも、まぁ気持ちはわかりますが、
ずいぶんな依頼ですよね……。

きっと編集者さんの中にも、本当はもっといろいろ試したいのに、
売上を考えて泣く泣く無難な路線にせざるを得ない人も
いるのではないかと思います。
決定権は営業部が持っていたり、会議で決まったりしますからね。

自分が、もっと相手を説得できる実績を作るしかないんだろうなと思います。
読者の皆さんに支持されれば、多少の冒険だってできるかもしれません。
それはつまり、売上がいい本を作る、ということになるのでしょうね。

もっといろいろなデザインの本が店頭に並ぶようになれば、楽しいし、
デザイン感覚も磨かれるのに、と思います。

久保田さま
すみません、具体例を書いてしまったので、
かなり愚痴っぽくなってしまいました。
編集者さんが悪いと言おうと思った訳ではなく、無難な方向性に行かざるを得ないことが悲しい、という思いを書きたかっただけです…
申し訳ないです。

>>もっといろいろなデザインの本が店頭に並ぶようになれば、楽しいし、
デザイン感覚も磨かれるのに、と思います。
本当にそう思います。

こちらが良い提案が出来ていないということだと思うので、
解決策を探すべく精進していくしかないですね。

ほわいとさんへ、

こんにちは。
いえいえ、全然愚痴っぽいと思わなかったです。
ほわいとさんが編集者さんのことを悪く言っているとも
まったく思わなかったので大丈夫です。

私が編集者さんのことを書いたのは、直接一緒にお仕事を
するのが編集者さんだからなんです。
例えばデザインについて編集者さんと私が似たような考えを持っていたとして、
ちょっと冒険したいと思っていても、商業出版である限りは
いろいろな条件があって、当然ながら何でもOKとはいきませんよね。
そこで一緒に知恵を出し合ったりして……だから編集者さんは
いちばん近い存在なんです。

もちろん、自分の意見が何でも通ればいいというわけではなくて、
例えば営業部の方々は本を売るプロなので、「売れるデザイン」という
視点を持っていらっしゃいます。
それは自分の意見とは違うこともありますが、その見方は勉強になりますし、
結果的にそれを取り入れてよかった、ということもあります。

作る側としては、デザインだけに関して言えば
もっとバリエーションが増えて、いろんなデザインが見られるように
なるといいなと思います。

そのためには、読者の皆さんに支持していただけるような本を作り、
周りの人たちを説得できるだけの実績を持てるように
努力していかないと、ですね。
お互い、精進いたしましょう。

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