
日本の原発事故について、ドイツでは震災直後から非常に大きく報道をされていたのはこれまでにも書いたとおり。
ただ、私はその当時は本の締め切りに追われていてまったく時間がなかったし、ドイツの報道でヘンに動揺したくなかったので、途中から意識的にニュースをシャットアウトした。だから、原発事故に関するドイツの報道について何かを語る資格はないんだけど、それでも街を歩けば新聞は売っている。それでかなり精神的に参っていた。
もっとも最近はほかの大きなニュースも次々あったので、福島の原発事故については取り上げられる機会も減っている。
今、南ドイツに出張に来ていて、何人かのドイツ人と知り合う機会があった。話の流れでテーマは現在の日本の状況になる。
前にも書いたとおり、ここでもドイツの報道で感じたような、激しいトーンで話すドイツ人はいなかった。もちろん仕事上で知り合っているわけだから、お互いに気を遣っている。いきなり本音をぶつけてくるわけがない。それでも、私が日本人だからということで腫れ物に触るような扱いということはなく、ごくニュートラルな様子だった。
たとえば、福島県の人々が危険を承知で故郷に戻りたがったり、留まっていることに対して、「そりゃあ、自分のルーツがある土地をそう簡単には去れないものですよ」と、ドイツ人女性に言われたりした。
別の街では、日本人男性と結婚した娘さんがいるというドイツ人女性が「娘はしばらくドイツへ帰国していたけど、また日本へ帰っていったの。心配だけど、何も起きないと信じていれば、きっと無事」と、つらい心境を話してくれた。
そんなこんなで、このテーマについてもっと大勢のドイツ人と話してみた方がいいなと思った。
どんなテーマもそうだけど、報道から受けるイメージと現実との間には、けっこうな開きがある。私がドイツの報道から受けていたような「原発即廃止!」とエキセントリックに叫ぶような人には、未だに会わないのだけど(原発の是非についてはまた別のテーマ)。
いろいろな人と話して、自分なりの感覚をつかまないと、やっぱりどうもわかったような気になれない。
twitter:@kubomaga