8月に入ると、いつ夏が終わるかわからない焦りが出てくる。まだ天気がいいうちにあと一度は屋外でビールを飲みたいもんだと思い、友人を誘ってビーチバーで夕暮れを過ごした。
暖かく、気持ちよい風が吹いて、目の前の水面はキラキラ光ってる。こういう状況が私をベルリンから離れなくさせるんだよなーと言うと、友人たちも腰を落ち着けてベルリンで暮らすつもりと言い出し、ひとしきりその話題に花が咲いた。
友人たちは、それぞれバイトをしながらがんばって自分の活動をしている。私もそうだけど、決して贅沢できる状況ではない。それでもベルリンには、日本の生活にはない魅力があるとみんなが思っている。
それは人によって違うけど、共通しているのは"自分の時間がたっぷりとれて、お金がなくても楽しめる"こと。日本にいたときは今より仕事もやりやすくて、お金ももうちょっと稼げていた。でもその分ストレスも多くて、それを消費行動で解消していた気がするし、そもそもひとつ一つの行動に何かとお金がかかっていたように思う。
友人は「ベルリンだったら家に人を呼んで一緒にご飯をつくったり、夜遅くなっても終夜運転しているバスや電車を使って帰宅できる。でも、日本じゃ家が狭いから無理だし、終電がなくなったらタクシーしかないからお金がかかる」と言っていた。
そういえば、東京暮らしの経験があるドイツ人も「稼ぎはベルリンの方が少ないけど、安い家賃で広い家に住めるから生活水準はずっといい」とよく話している。
私の生活も、きっと日本の友人が知ったら驚くような倹約ぶりだと思うけど、それでもこのベルリンの心地よさがいい。夏の長い夕暮れに森を散歩したり、公園の芝生でビールを空ける生活をしていると、日本に永久帰国する勇気が薄れてしまう。
でもベルリンも確実に家賃は上がっているし、空き地は消えて家になっている。私が大好きなこのシュプレー川沿いも、投資家たちがビルを建てる計画がある。
いつまでも私が好きなベルリンの姿でいてほしい。この心地よい暮らしができる町であってほしい。