2019年10月アーカイブ

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海上を走って島へ


(*ベルリンのお店やライフスタイルに関しては、在ベルリンガイドの松永さんとの共同ベルリン情報ブログ「おさんぽベルリン」をぜひご覧ください。バリバリ書いてます)


この内容は前回から続いています→ドイツ最北端の島Sylt(ズュルト)へ・計画編


■ベルリンからズュルトへ

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ズュルトの終着駅、ヴェスターラント駅は頭端式ホーム


 切符もホテルも予約していざ出発当日。私にしては早めの出発時刻だったにもかかわらず、緊張して30分ぐらい前にベルリン中央駅に着く。市内公共交通は数分程度の遅れはザラで、それが重なれば下手をすると遅刻してしまうからだ。だから大切な用事のときは、相当余裕を持って行動するクセが染み付いている。いいんだか悪いんだかわからないが、ドイツに住んでからは、最後の最後まで油断できないと思うようになった。

 中央駅は早めに着いても、カフェやパン屋などがたくさんあるから時間をつぶすのには困らない。車内で食べようと、朝食用のパンを買った。コーヒーは迷った挙げ句に買わずじまい。ズュルトは物価が高い。これから3泊もするのだ。さして重要でないテイクアウトのコーヒーよりもほかに、お金を使うべきものがあるはず。要は貧乏性なだけだが。

 地下ホームの乗り場に行くと、列車は既に到着していた。予約した座席の車両に乗り込む。まずはベルリンからハンブルクまでインターシティ(都市間急行)で約2時間半。そこからRE(地域快速)に乗り継いで3時間とちょっと。ハンブルクから先のほうが時間がかかるのか。じゃあパンを食べるのはいつにしようか......などと、どうでもいいことを考えるうちに列車は動き出した。
 ほぼ定刻通りの走行。日本では当たり前かもしれないけれど、ドイツにいるとそれが奇跡に思える。全国を走るドイツ鉄道の遅延は、市内交通に勝るとも劣らないから。というよりも、走行距離が長い分、市内交通よりもトラブルがある印象がある。

 ハンブルクで乗り換える。ズュルトは島なので、到着するまでに海を渡ることになる。これが既にこの旅最初のハイライト。車窓から見える本土の陸地がだんだん狭まって、左右から海が迫ってきて......そして最後は海ばかりになる。その興奮をもう一度味わいたかった。

 ハンブルクからズュルトまでの地域快速は空いていた。数時間乗って、本土最後の駅を出る。さぁ、もうすぐ。もうすぐ左右が海だけになる。カメラを持って待ち構えた。

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本土最後の草原。羊たちが草をはむ

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やがて草原が海になり

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完全な海に

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反対側も海


 本土最後の土地には、もう木も家もない。草原で羊たちが草をはんでいるだけ。その草原が少しずつ細くなる。やがて羊たちもいなくなり、緑色の陸地が水になっていく。海だ。海の上を走っている。
 
 本土と島の間は、盛り土がされて線路が通っている。ズュルトに着いてから知ったことだが、1927年に島と本土を結ぶ鉄道が開通した際には賛否両論あったらしい。鉄道が通ることで、島独自の文化が薄れてしまうのではないかという懸念があったそうだ。でも、いま私はこうして鉄道で島へと走っている。うれしい。

 やがて左右の窓に再び草原が現れた。草原の面積はどんどん大きくなり、私はズュルト島に上陸した。


■バスの切符購入のミッション達成に満足

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本土からの車は、すべて列車に積載されて島まで移動する


 ズュルトに上陸してから駅は3つある。私が降りるのは終着駅のWesterland(ヴェスターラント)。前回も書いたように、この駅周辺がいちばんにぎやかだ。車で移動しない私は、駅から徒歩で行ける場所にホテルを取ったのだ。

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リゾート地のメインストリートらしい瀟洒な通り


 ホテルでのチェックインを済ませたら、荷物を置いてすぐにまた駅へ。駅前のツーリストインフォメーションで、バスの切符について3日券を買うべきか、2日券で足りるか相談したかった。

 「3日めの移動があなたのプラン通りだと、2日券を買って3日めはその都度切符を買ったほうが安いけれど、もし3日めにほかのエリアも行くのなら、3日券のほうがお得ですね」
 と言われ、その場で3日券を購入。26.10ユーロなり。これ1枚で、明日から島内どこへでも行ける。

 時間はまだ夕刻。切符を買うというミッションを達成して満足。美しいヴェスターラントの駅舎を撮影した後は、そのまま歩いてビーチへと向かった。

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美しいヴェスターラント駅構内。1927年の鉄道開通と同時開業だったことを踏まえるとアールデコか

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窓の柄も美しい。ちょっと折り紙のよう


■白く光る海辺へ

 ズュルト島は北海とワッデン海に囲まれている。私が訪れたのは9月下旬なので、いずれにせよ海水浴シーズンではない。けれども人気リゾート地のズュルト、それもいちばんの繁華街に面したビーチは散歩する人々でにぎわっていた。海は夕日で白く光っている。

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旅情あふれるシュトラントコルプのある海辺

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貝殻が打ち寄せられている

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ハマナス、かな


 白い砂浜には、シュトラントコルプというドイツ発祥の屋根付きベンチが並んでいる。この風景がとても好き。
 せっかくの浜辺なのだから寝転べばいいと思うかもしれないけれど、ドイツの海辺は風が強いためにこのベンチが生まれたそうだ。発明されたのはこの北西部ではなく、バルト海側の北東部で、屋根部分のカーブに違いがあるという。でもどちらも籐で編まれていて、海辺の風情がある。ドイツの海だ、と思う。

 街の酒場で1杯飲むと、もう日は暮れていた。

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おやすみなさい

(次回に続く)
 

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Sylt島の北にある灯台List West(写真はすべて今回の旅行で撮影したもの)


(*ベルリンのお店やライフスタイルに関しては、在ベルリンガイドの松永さんとの共同ベルリン情報ブログ「おさんぽベルリン」をぜひご覧ください。バリバリ書いてます)


■はじめに

 2019年9月の終わりに、ドイツ最北端のSylt(ズュルト)島へ旅行しました。その旅行記を何回かに分けて書き留めておこうと思います。
 その前にちょっとご説明を。この旅行記は、私自身が書き記しておきたいという思いから書きます。でもせっかくなら、この記事を読んでくださった方がSyltに興味を持ったり、実際の旅行の際に情報としてお役に立ったらいいなとも思います。ですので、私の個人的な旅エッセイであると同時に、観光ガイド記事としての役割も多少意識して書くことにします。

***

■19年前にできなかったことを、いま

 そもそも今回の旅の発端は、初めてSyltを訪れた2000年に遡る。その年の夏、私はドイツのケルンに2ヵ月間ホームステイをして語学学校でドイツ語を習い、その後1ヵ月かけてドイツを旅していた。行きたい場所を大まかに挙げて、あとは成り行きまかせのひとり旅だった。

 旅のお供は『地球の歩き方 ドイツ』1冊。当時はインターネットは既にあったものの、情報はごくごく限られていた。当然、SNSもスマホもなかった。パラパラと『地球の歩き方』のページをめくっていると、Syltの欄に「茅葺屋根の家が見られる」という一文と、その写真が載っている。「いいな。見てたい」と、気ままな旅の行き先にSyltが加わった。

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茅葺屋根の家は島内全域に立っている

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グレーの空に鳥の群れが飛び立っていった


 Syltは島だが、鉄道で行かれるらしい。とりあえず島の終点駅であるWesterland(ヴェスターラント)までの切符を買い、列車に乗った。ホテルは取っていなかった。島だから簡単に一周できるとでも考えたのだろうか、宿泊するつもりでなかったのだ。

 ところが島に上陸すると、どうやら思いがけず広い様子。しかも茅葺屋根が多いというKeitum(カイトゥム)までどうやって行けばいいのかわからない。Keitumへの行き方を尋ねるにしても、習ったばかりのドイツ語で聞くのが気が引ける。夏だったこともあり、駅周辺はバカンスを楽しむ家族であふれている。なぜ私はここにいるの......。結局Westerlandの駅周辺を数時間ウロウロしただけで、次の行き先へ向かったのだと記憶している。

 それほど後悔はしていないつもりだったのだが、「茅葺屋根見学未遂」の気分は意外と尾を引いていたようだ。あれから19年が経ち、その間に茅葺屋根の家を見せてもらい、自分の本(『かわいいドイツに、会いに行く』)にも書いたのだが、それはSyltではない島。茅葺屋根の内側が見られて非常に満足したのだが、それとは別にSyltのことがときどき頭をよぎった。

■Syltはドイツ最北端の島

 ここでSyltについて説明を。Syltはドイツ最北端の島で、北フリースラント諸島のひとつ。北海とユネスコ自然遺産に登録されているワッデン海に囲まれている。
 下のドイツ全国地図(クリックで拡大)で、いちばん上の部分にDÄNEMARKと書かれているところがデンマーク。そのすぐ左横にカタカナの「ト」の字のような島が見えるはず。

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©wikipedia

 拡大した地図が以下のもの(クリックで拡大)。

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 上の地図の左上にSyltと書かれた南北に細長い島。その右側、本土に描かれている黒い実線はドイツ(南側)とデンマーク(北側)の国境線。Syltの北側に位置しているRömという島は、もうデンマーク領。ドイツ本土とは鉄道でつながっている。

 私が抱いていたSyltのイメージは茅葺屋根の家と灯台、それからセレブが集まる高級リゾート地というものだった。

■島内の公共交通・宿そして鉄道

 Syltに行きたいと19年越しにぼんやり思っていたけれど、これまで本腰を入れて計画しなかったのは、島内の交通の便が悪いのではないかと勝手に想像していたから。私は車を持っていないから、公共交通がないと困る。でもそろそろ行っておかないと、いつ何が起きるかわからない。ならば冬になる前に行かないと。

 そこでちゃんと調べてみると、島内にはバス路線が密に張り巡らされていることがわかった。なんだ、全然問題ないじゃん。そこから一気に現実的に考え始めた。

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Westerland駅の後ろにバスターミナルがあり、島内各方面へとバスが出ている


 まずは宿泊場所。Sylt島内で最もにぎやかな場所は、鉄道の終着駅があるWesterland(ヴェスターラント)なので、その辺りのホテルを探すことに。駅から歩いて行ける場所なら、車もいらないし、食事にも困らないはず。なんせ高級リゾート地なのでホテルの価格帯も高いけど、ネットで検索してなんとか払えるホテルを見つけた。

 次は滞在日数。2泊? それとも3泊?
 私がSyltで見たいものは、事前にネットでいろいろ調べて決めていた。茅葺屋根の家。島にある灯台5基すべて。博物館2館。海辺。これらをすべて行こうとすると、2泊ではまず無理だろう。段取りがうまくいったとして、3泊でちょうどいいくらいか。しかしホテルは高い......。悩んだ末に、やはり3泊することにした。今回行ったらもう二度と行けないかもしれない。ケチって2泊にして心残りが生まれたら、一生後悔するかもしれない。そして旅行を終えたいま、それは正解だったと確信した。

 ホテルをネットで予約した後は、ドイツ鉄道の予約。これもネットで。ハンブルク乗り換えで、約6時間で到着する。
 ベルリン〜ズュルト間は、鉄道のほか毎週土曜にeasy jetが直行便を飛ばしている(2019年9月現在)。でも私の頭の中には、鉄道以外の選択肢はなかった。それは以前の記憶があるから。

 19年前、ドイツ本土からSylt島へ鉄道で渡ったとき、途中から陸がなくなり、海しか見えなくなった。右も左も、海。この辺りは干潟で、盛り土の上に引いた線路を鉄道はひた走り、島へと向かう。それにとても感動した。あの感動をもう一度味わいたかったから、鉄道しかあり得なかった。

 あとは、島にある5基の灯台の中でただ一つだけ見学できる灯台のガイドツアーをネットで予約。これで出発前の準備は済んだ。お天気がよくなることを祈って、出発の日を待った。

(次回へ続く→ドイツ最北端の島Sylt(ズュルト)へ・1日め「鉄道で海を渡る」

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