5月1日夜のクロイツベルク

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 5月1日のメーデーは、ドイツでは祝日。この日は労働者のデモが行なわれ、夜になると乱闘騒ぎが起こるのが"伝統行事"となっている。
 特に毎年ひどいのが、クロイツベルクとプレンツラウアーベルク地区。車が炎上したり、ガラスが割られたりする様子が、毎年テレビで放送される。
 私はこれまで、直接自分の目で確かめたことがなかった。なので、今年はちゃんと見てみようと思った。自分で見ないことには真実はわからないじゃない。ジャーナリスト魂。ウソ。

 ということで、午後7時ごろにクロイツベルクへ向かう。午後7時といっても、ドイツではまだまだ明るい。昼間の雰囲気だ。
 路上のあちこちで、ストリートフェスティバルが開かれている。路上のあちこちに設置されたステージで、いろんなバンドがライブをやっている。みんなビール瓶片手に踊ったりしている。食べ物屋台もあちこちに。来ている人は、パンクスやお金のなさそうな人が多いけど、危険な雰囲気は特にない。
 5月1日に開かれるこのストリートフェスティバルは、実はここ2~3年来のもので歴史は新しい。これは、夜中に起きる暴動を防ぐ目的で始まったらしい。同じようなフェスティバルはプレンツラウアーベルクでもあって、効果を奏しているという。
 昼間にここを歩くのはまったく問題ない。みんな普通の人たちだし、もし気をつけるとすれば、路上にはビール瓶の破片が散乱しているので、素足にサンダルなどを履いてこないことぐらい(これはラブパレードでもクリストファー・ストリート・デイでも同様だ)。私も屋台の食べ物を食べながら音楽を聴いたり、ブレイクダンス大会などを見たりして楽しんだ。しかし、そのステージを遠巻きにしている警官隊が見えると、夜はいったいどうなってしまうんだろうと思った。

 そして、日没。昼間のうちから街角ごとに待機していた警官隊に緊張が走る。あちこちで警官と一般市民との小競り合いが起きていたり、路上のコンテナが燃えたりして、実行犯が取り押さえられたりしていた。
 しかしながら、大半の人たちは暴力に参戦することなく、ただ路上にたむろしているだけ。この状況をもちろん安全とは言わないけど、自分が突然殴られたりとか、そういうことはない。

 この伝統暴力行事は、もともと70年代あたりから始まった、当時の社会支配階層に対する抗議が発端だったらしい(これは現在でも行なわれている労働者のデモとは異なる)。しかし、今ではそんな目的はなく、ただ単に日ごろの鬱憤を晴らしたい人や、前回も書いたように祭りのノリで騒ぎたい人がほとんどだろう。

 こういう予定調和な中で暴動を起こしたところで何が楽しいんだろうか、と私は思う。それってかっこよくないよね。しかし、それと同時に、人間にはガス抜きが大切で、こういう日が若者や貧困層には必要なのだとも思う。そういう意味で、警官が準備万端で待機している中で、お決まりごととして暴動が起きて、すぐにそれが回収されて、というのは非常によく管理されていると、ちょっと感心する。
 明け方には清掃局が来て、路上に散乱したガラス破片やゴミを一掃。翌日の朝にはまるで何事もなかったかのように、1日が始まる。

 テレビや新聞などのマスコミは、絵的においしいところをクローズアップしたいから、どうしても何かが派手に炎上しているところとかを大々的に載せてしまう。それって、暴動を賞賛しているようなもんだ。そして、知らない人はとんでもなく恐ろしいものだと思い込んでしまう。
 私はそういうのが嫌だから、派手じゃない、現実の淡々とした部分を紹介していきたい。でもそういうのは一般紙ではできないから、クボマガを書いているわけだ。たぶん。

2022年11月

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