さよなら、ベルリン

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大好きな、ベルリンの家


 「あなたのことは好きだけど、もう一緒にいられない」
 こんな理由で別れを切り出す人を、私はクソだと思っていた。そんなのはきれいごと。なのに、いまの私のベルリンに対する気持ちは、それしか表現しようがない。

 私は日本に本帰国します。

 日本への本帰国を考えはじめたのは3〜4年ぐらい前からでした。ベルリンで好きな場所が年々消えていき、来た当初のようなワクワクした気持ちになることは少なくなりました。
 街は生き物だから、変化するのは当たり前。私だってもう長いこといるのだから、新鮮な気持ちが薄れていくのは当然です。でも寂しく感じることが増えました。
 
 ただそれは私にとってはそうだというだけで、ベルリンという街の魅力がなくなったわけではありません。たとえば、以前は日本人がベルリンで就職するなんて考えられなかったと思います。ベルリンは大企業がなく、ドイツ国内ではほかの大都市に比べて失業率が高かったので、ドイツ人ですら就職が難しいと言われていましたから。
 でもいまは違う。この街で、企業で活躍している若い日本の人たちは何人もいます。気の利いたものや、おしゃれな場所も増えました。いまのベルリンのほうが好きな人、いまのベルリンだから暮らせる人はいるでしょう。

 あの頃はよかった、と言う趣味は、私にはありません。ベルリンの発展と私の人生がシンクロしていたと感じられた時期が終わったのなら、それはもう日本に帰るときなのだと思います。

 ベルリンで会った何人もの日本人の方から、私の本や記事でベルリンを楽しみました、ベルリンに来るきっかけになりました、というお言葉をいただきました。とてもうれしく光栄で、ちょっと涙ぐんだりもします。と同時に、責任も感じます。
 私は情熱を注げるものしか書けない。生半可な気持ちでだましだまし続けるのは、自分に対しても読む人に対しても誠実ではないはずです。

 私の目標は、「よく生きる」こと。 別の言葉でいえば「生き切ること」です。そのために、そろそろ環境を変えるときだと、心が言っているのだと思います。


 日本の家族も大きな存在でした。正確に言うと、日本にいる私の夫と両親です。私がベルリンで家庭を持っていたのであれば話はまったく別ですが、私はベルリンが好きだという理由だけで、ひとりでずっと暮らしてきました。でも両親も高齢だし、自分自身も年を取ります。大切な私の家族と、もっとたくさんの時間を共に過ごしたいと思うようになりました。本帰国自体は昨年すでに決めていましたが、その後コロナ禍が訪れて、その気持ちが一層強くなっています。
 これまで何も言わずに私の滞在を受け入れてくれた家族には、感謝の気持ちしかありません。


 本帰国で家を整理していて、これまでいかに多くの人に支えられて来たかを改めて実感しました。ここで出会ったすべての人に、ありがとうございました。

 ベルリンはいまも大好きです。だから来年また来ます。
 それまでの間、さようなら。またすぐに。


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