(*ベルリンのお店やライフスタイルに関しては、在ベルリンガイドの松永さんとの共同ベルリン情報ブログ「おさんぽベルリン」をぜひご覧ください。バリバリ書いてます)
雑誌の仕事が短距離走なら、本の仕事は長距離走。
この秋に出る新刊のために、4月から取材を重ねて、7月はほぼずっとドイツ国内を飛び回って、8月に入ってようやく原稿執筆。
取材は大変だけど楽しい。知らないものや人に出会えて、たくさんの経験ができる。
でも原稿は、苦しいときのほうが多い。毎朝起きてから床に就くまで、一日中原稿のことを考えている。
以前、人から言われたことがある。「久保田さん、本書いてるとき、いつも同じこと言ってますよね」って。
そうかもね。そうかもしれない。
私が原稿執筆の段階になっていっつも思うのは、こんなこと。
「こんな内容でいいんだろうか。もっと別の、何か素晴らしい内容があるんじゃないだろうか」
でもそんなものは、どこにもないことは知っている。
「自分がいいと思うものを、みんなもいいと思ってくれるんだろうか」
自分がいいと思うからこそ書きたいわけで、そうでないものを書いても意味がない。でも、独りよがりではいけない。商品なんだから、売れなければ仕方ない。
「原稿を書いていると鶴の恩返しを思い出す。鶴が自分の羽根を抜いて織物を織るように、書いている時は自分の身を削っている」
でも痩せないけど。
朝から寝るまでずっと原稿のことを考えていて、ほとんどどこにも出ないし、誰とも会わない。そんなことをしていたら、間に合わない。出かけたところで、楽しめない。体を動かさないと毒だから、夕方になって無理やり散歩に行くけれど。
だから、今は苦しい。
でもね、ふと、しあわせに思える一瞬があるのよ。
自分は書くことで生かされているんだと。才能とか、そういうんじゃなくて、書く機会を与えてもらったことで、自分は生きていられると。それがしあわせ。
本を書けるのは本当にありがたいし、やっぱり好きな仕事。
いつも「これが最後になるかもしれない」と思って書いている。