(*ベルリンのお店やライフスタイルに関しては、在ベルリンガイドの松永さんとの共同ベルリン情報ブログ「おさんぽベルリン」をぜひご覧ください。バリバリ書いてます)
灯台に会いに来た旅・2日目。(初日はこちら→灯台に、会いに来た)
思いがけなく初日に10km遠方からご対面できた、Westerheversandにある大好きな灯台。いよいよ2日目の今日が、会いに行く日。
宿から灯台までは約10km離れている。車を持っていない私の移動手段は 1.レンタル自転車 2.タクシー の2択。
自転車は宿で借りられるとのことだったし、たとえ私のサイズに合ったものがなくても(ドイツの自転車はサドルがむやみに高い上に、私の身長は150cmときている)、近くに子ども用自転車を揃えたレンタル自転車屋もあるらしい。
タクシーは片道30ユーロ程度だという。電話で呼べば来てくれる。
天気は晴れている。雨も降らない見込みだ。自転車ならお金もあまりかからない。自転車を選ばない手はない......のだろうが、心配の種がひとつあった。
持久力にまったく自信がないのだ。
悩んだ挙げ句、結局タクシーを呼ぶことに。なんて軟弱なんだろう、自分。しかしドイツ人のようにハードに自転車を乗りこなす自信はまったくなかった。一眼レフも持っているから自転車じゃ危ないし、荷物が重いし......などと心の中で言い訳をして、軟弱な選択を正当化しようとする。
しかしタクシーに乗るのだって悪くない。地元生まれ・育ちの運転手さんに土地のことをいろいろ教えてもらった。この辺りの地名にはよくDeich(ダイヒ=堤防、土手)という単語が付くけれども、それは1930年代(32年だか35年だかと聞いたが忘れてしまった)までこの辺り一帯が土手だったからだそうだ。確かにホテルから海辺に行くまでには高い土手が残っている。
自分の興味から「茅葺き屋根の家が多いですよね」と聞いてみると、昔の農家はみな茅葺きで、でも現代では農家を止めてしまった家も多く、その家屋が貸別荘などに変わっているらしい。確かに、売りに出されている茅葺き屋根の家も見た。
そんなこんなで、15分ほどで灯台手前の駐車場まで到着。ここから先はユネスコ自然遺産に登録されているWattenmeer(ワッデン海)ナショナルパークになっていて、車は進入禁止になっている。徒歩か自転車でないといけない。歩くと40分程度。パーク内への入場は無料らしい。
これまで写真を見ていて、Westerheversandの灯台の周りには何もないなと思っていたけど、ナショナルパークになっていたからなのか。
駐車場から歩き始めると、遙か彼方に灯台が見える。きのう浜辺から見たのと同じような小ささ。でも今日は私が一歩進むごとに、灯台も一歩近づいてくる。もうすぐ、もうすぐ夢見ていた灯台にたどり着ける。
ナショナルパーク内は一面湿地帯で、海辺まで歩くと干潟が広がっている。舗装された道があって、歩行者・自転車はそこを通るのだけど、その舗装道が(たぶん)羊のフンだらけで衝撃を受けた。
これは灯台に会うための試練なのだろうか。しかしフンは乾燥しているものが多く、踏んだところで、どうということもない気がする。
やがて灯台が目の前に近づいて来た。はやる心を抑えるように、写真を撮りながら一歩ずつ近づいていく。灯台の両脇にある元灯台守の家も、はっきりと見える距離だ。
そして遂に灯台の麓へ。塔の足元のあたりを触ってみる。下から見上げると、縞模様の赤い部分は思ったより明るく、日に焼けていた。
事前に検索して知ったのだが、灯台には内部見学ツアーもあるという。ただし月・水・土の開催で、事前予約が必要だとホームページには書いてあった。私が来るのは木曜だし、灯台の佇まいが好きなのであって、内部は見学できなくても後悔しないと思っていた。
しかしここまで来てしまうと、やはり内部も見てみたいという気持ちが湧いてくる。私は民家にお邪魔するのが好きなのだから、灯台に入りたくなっても不思議ではない。なぜ見学可能な日程に旅行を組まなかったのか。
すると突然、灯台の麓にある目の前の扉が開いた。中から人がゾロゾロと出てくる。
え、もしかしてこれ見学ツアー? 今日もやってるの?
引率者らしき男性が「次の回の人〜」と呼びかけると、周りにいた数人が一斉に灯台に入ろうとしている。
えっ、えっ、ちょっと待って。私も入りたい。
「1人なんですけど、空きはありますか?」と聞いてみると、「5ユーロです」と、あっさりと通された。うわぁー、まさか夢見ていた灯台に入れるなんて!
当たり前かもしれないけど、灯台の中はらせん階段になっていて、各フロアに部屋があった。なんと、この中で結婚式(パーティーではなく、ドイツの役場で行う、婚姻証明書の署名による結婚式)もできるそうで、そのための部屋もある(帰りのタクシー運転手さんの友人は、ここで結婚したそうだ)。
私は灯台の外観だけに興味があって、本来の役割とか技術的なことはまったく調べてなかったのだが、内部見学ツアーでいろいろ教わった。
知識がない分野の上にドイツ語で説明を受けたので、正しく理解できているか心許ないけど(もし正しいことをご存じの方がいらっしゃいましたら、教えてください)、灯台にはいくつか種類があるらしい。
位置のオリエンテーション用の灯台もあるけれども、この灯台は日本語で言う「指向灯」というものらしく、赤・白・緑の3色の光で安全な航路を示しているそうなのだ(詳しくはこちらのサイトを参照してください→http://www.kaiho.mlit.go.jp/03kanku/choshi/inubo/inubo/lighthouse/types.htm)。
「でも今ではGPSがあるから灯台は不要なんですよね?」という質問には、「そうだけど、GPSはアメリカがコントロールしているから、100%信頼できるわけではない。今、ヨーロッパが開発しているガリレオというGPSシステムがあって、それが完成すればドイツもコントロールに関わるから、不要になるかもしれない」という返答があり、へぇぇ〜と感心した。なるほどねぇ。
1時間ほどの見学ツアーを終えて再び外に出た時には、充実感でいっぱいだった。夢見ていた灯台に会いに行ったら、偶然にも内部見学できて、そこから多くのことに触れられた。きっとご縁があったということだよね。
会えて嬉しかったよ、Westerheversand灯台。
灯台を背に駐車場まで戻っていく。昨日のように、やっぱり何度も何度も振り返る。そのたびに灯台は小さくなっていく。でもいいんだ、濃密な時間を一緒に過ごしたんだもの。
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