2012年9月アーカイブ

tage20120927.jpg

愛らしいミニバラ

 実は、鉢植えの植物をいただくのが苦手だ。
 植物は人の心を癒やしてくれるので必要だと思うけど、鉢植えだと枯らしてはいけないというプレッシャーがある。私は植物を育てるのが、あまり得意ではない。枯らしてしまったこともある。その罪悪感にかられたくないので、もっぱら最初から枯れることが了承済みの切り花を買っている。

 しかし先日、バラの鉢植えをいただいた。だから窓辺に飾ることにした。一応、水やりだけは気づいたときにするようにしていたら、じきに新たな蕾が次々とつき始めた。

 するとなんだかうれしくなって、毎朝窓辺を見るのが楽しくなった。枯れ気味の花は、新たな花のために切る。そして次の花が咲く。顔を近づけると芳香がした。

 そうこうするうちに、気づけばもう何週間も、窓辺のバラは私を楽しませてくれている。
 自分では絶対に買わなかったであろう、鉢植えのバラ。これほどの時間を共に過ごせるとは思わなかった。
 鉢植えも、いいもんだな。


生身のつきあい

| トラックバック(0)

tage20120922.jpg

ご一緒に踊りませんか


 すっかりご無沙汰してしまいました。毎日何をやってたかといえば、ロケハンしたり、雑貨ネットショップアムゼル(オープンして間もないです。よろしくお願いします)のことをやったり、その合間に原稿をチョロチョロ書いたりという、相変わらずの日々です。しかしぼちぼち本腰を入れて原稿を書かないと、あとでとんでもないことになるという恐怖が、日を追うごとに迫ってきている状態であります。

 さて、ちょうど1週間ほど前に中国で日本に対するデモが起きていた。以前の私ならそこまで気にしなかったと思うんだけど、中国舞踊を習い始めたこの2年以来、中国がすごく近い存在になってきた。
 
 2年前に漁船とトラブルが起きたときは、みんな何も言わなかったんだよね。ちょっと気を遣っている風なところも感じたりして。でもどう思ってるのか、気にはなっていた。

 なので今回は聞いてみたかった。デモに関してどう思っているか。2年前よりはお互いのことを知っているから、政治の話を持ち出しても大丈夫だろうとも思っていたし。

 そしたら、本当に誰も気にしてなくて。「デモ? あぁ、週末に起きてたやつ?」ってリアクション。「アジアの国同士が戦うのをアメリカが望んでるのよ」と言っていた。

 事の真相は私にはわかるはずなどないけど、政治的にどうであれ、一般人同士は踊りとか仕事とか、つまり実生活でつながってるんだなと思う。そういうふうに生身のつきあいが広がると、少なくとも一般人同士はひどいことになりにくいと。お互いに利益がある関係なら、実を取りたいだろうし。

 反感って、相手のことをよく知らないから生まれるんだと思う。私が中国舞踊を始めたのは単に運動不足解消のためだったんだけど、中国が身近に思えてきたのは大きな収穫だった。

tage20120915.jpg

どっちも気に入ったから2脚買ってしまった


 いや〜、人も物も出逢いっていうのがあるんだよねえ。蚤の市でね、出逢っちゃったんだよねえ、かわいい一人掛けのソファに。

 これは私が大好きなデザインで、50年代ドイツによく見られた形。ベルリンの蚤の市でもわりとよく見かけるデザインなんだけど、これはなんと言っても色がよかったんだよね〜。
 しかもめちゃくちゃ安かった。日本で1〜2回飲みに行ったら消えてしまうような金額で2脚買える。だから決めた。

 ただ、わりと汚れているので、きれいにしないと。衣服につく害虫とかが来るとやっかいだし。

 これでわが家のリビングは、椅子はもう十分そろった。もし今後新たな物との出逢いがあったとしたら、それを買う代わりに何かを手放すことにする。必要以上持っていてもしょうがないもの。

 さて、今度はこの椅子とソファ、テーブルの下に敷く敷物があるといいなあ。敷物が一枚あるだけで、くつろぎ感が生まれるんだよねえ。敷物は大事だと思うな。

 ってことで、DIYじゃないけどこれもわが家の部屋作りの一環なので「新居インテリアシリーズ」に入れておこう。
 実はDIY作業もちょっとやったのだけど、それは別の場でご紹介することになったので、そのときはお知らせします。

tage20120911-1.jpg

白いのはタイル製石炭ストーブ。ストーブは限られた部屋にしかなかった


 この前の日曜日はベルリン文化財一般公開日で、普段は入場できない施設も含め見学できた。私は「ベルリン・プレンツラウアーベルク地区の1900年頃の建設と暮らし」という展示に行ってきた。

 ベルリン中心部の住まいは、基本的に集合住宅。そのアパート(といっても広いので、マンションと書いた方がピンと来るかもしれなけど)は、1900年頃に建てられたものが多い。わが家の建物もそう。
 というのは、1800年代後半にベルリンの人口が爆発的に増えたから。急増する住宅のニーズに応えるために、集合住宅の建設ラッシュとなったわけ。現在のベルリンの集合住宅は、建設された時代によってアルトバウとノイバウに大別されるけど(詳細は拙著『ベルリンの大人の部屋』をご覧ください)、アルトバウは大体1900年前後に建築されている。たまに、外壁とかに年号が入っていることもある。

 そういう建物に自分が住んでいると、いろいろ疑問を持つようになるのよ。なぜこんな場所にこんなものが付いてるの?とか、この非合理的な造りはなんでなの?とかね。
 その答えは、この建物ができた当時の暮らしを知って、徐々にわかってきた。当時は各世帯にバスルームはおろか、トイレも付いていないことも普通だったとか、石炭ストーブで暖を取っていたから煙突が必要だったとか、裕福な家庭にはお手伝いさんが同居していたとか......。

 そんなふうに、日常生活や取材を通してあちこちで見聞きした断片的な知識が、日曜日に行った「ベルリン・プレンツラウアーベルク地区の1900年頃の建設と暮らし」展示で「つながった!」と思えたの。

 この展示は、普通のアルトバウの一室で開催されている常設展で、普段も見学できる。リビング、寝室、キッチン、トイレ(この住まいには比較的富裕層が住んでいたので、トイレは付いていた。お風呂は無し)には、当時の家具や備品、パネルによる説明が展示されている。それを見て、私のアパートの間取りなども非常に合点がいった。

 インテリアで印象に残ったのは、壁紙の存在。『ウォールペーパー・インテリアレッスン』でも書いたけど、1980年代頃までは、ドイツの家庭では(ほかのヨーロッパでもそうかもしれないけど)各部屋に壁紙を貼ることが普通だった。この展示でもやはり部屋には壁紙があって、その存在感が大きかった。

tage20120911-2.jpg

リビングの壁紙


 今ベルリンの集合住宅に入居すると、通常壁にはRaufasertapete(ラウファーザータペーテ)という、表面に凹凸のある白い壁紙が貼られている。でもベルリーナーはそれを嫌う人も多い。
 安っぽいRaufasertapeteではなく、きれいな柄の壁紙なら部屋を劇的に変えると思う。その存在感は、壁を色でペイントするよりも大きいんじゃないかな。
 そんなわけで、私も実は壁紙を一面だけ貼ることを考慮中。100年前にできた建物に住んで、当時に思いを馳せながら自分のインテリアとリンクさせていくのは楽しい。

ベルリン・プレンツラウアーベルク地区1900年頃の展示
http://www.ausstellung-dunckerstrasse.de/

tage20120905.jpg

内容超充実。文庫本ブックカバーもついてます

 みなさま。giorni(ジョルニ、実業之日本社)2012 AUTUMN号が発売になっております。今号の特集は「すっきり、きちんと ドイツの暮らし方と家事習慣」。門倉多仁亜さんに教わるドイツ式献立術や、ドイツ人家庭のすっきりきれいに暮らす習慣など、「これぞドイツ!」な内容です。ドイツにご興味のある方、日々の暮らしをすっきりとラクにしたいという方、ぜひともご覧くださいませ。

 私は「学びたい! ドイツの暮らし方」の一部と「ドイツの最新家事術」を担当させていただきました。
 「学びたい! ドイツの暮らし方」は、ドイツ人の一般家庭にお邪魔し、整理整頓のコツやお掃除についてインタビュー。お部屋の写真もドーンと大きく掲載されていて、楽しんでいただけるのではないかと思います。

 「ドイツの最新家事術」は、家事のプロ団体を取材しました。この取材を通して、あ、やっぱりドイツって合理的、との思いを新たにしました。目的があって、それを達成するために計画し、実行する、そんな感じです。これは、日本人がわりと苦手とするところではないかと思います。このスパッとした合理性、生活をラクにするには参考になります。

 今回の記事は、私が実際に取材して、見て、知ったことを本当にリアルに書きました。実はそれは、わりと勇気が必要でした。
 というのは、「ドイツの家事」という分野に対して日本では既に出来上がったイメージがあり、それに則った内容が求められているように以前から感じていたからです。
 でも、実際に現地で生活していると、そうではない現実もいろいろ見えてくるものです。また、現地特有の習慣や住環境などがわかってくるので、理解できることが多々あります。

 例えば、ベルリンの集合住宅は東京に比べて一般的に広いですし、地下や納戸などの収納スペースが付属しているケースが多いです。それはやはり便利です。
 また、部屋のお掃除を定期的にプロに依頼することも珍しくありません。日本では、お掃除の外注は非常に贅沢と思われるかもしれませんが、私の知る限りベルリンでは比較的手頃な価格(時給にして1500円程度)で頼めます。それは、諸外国からやってくる労働者がいるという背景もあります。

 そうした背景を知らないと、まるでドイツ人が常に自分一人で家事を完璧にこなしていると思うかもしれません。そう思うことで、自分を責めたり、プレッシャーを感じてほしくないのです。だから、今回はそういう状況も書きました。こうしたことも書かせていただけて、感謝しています。

 確かにドイツ人は整理整頓が上手です。遺伝子の中にその能力が組み込まれているのではないかと思うことがあります。誌面からそれが伝わるように書いたつもりです。
 毎日をラクに、楽しく過ごせるように、ドイツの暮らしがヒントになればうれしいです。

tage20120901.jpg

しかし透明な裸電球は美しいとも思う


 ベルリンに来たばかりの頃、先のことがわからないのとお金がないのとで、自分の部屋づくりなどないも同然だった。照明は天井からぶら下げた裸電球。
 それを見たドイツ人が、その裸電球を消し、おもむろにデスクライトを壁に向けて点けたことがある。間接照明のほうがずっと雰囲気がよくなることを学んだ瞬間だった。

 ベルリンでお宅インテリア取材をしていると、日本とは意識がずいぶん違うように思う。照明へのこだわり、古い物への愛着。ヨーロッパだからだろうと思っていたけど、どうやらそうではなかった時代もあったみたい。

 ベルリーナーのお宅の取材時に、日本のインテリアについて聞かれることがある。日本では間接照明への意識はまだ低くて、親の世代は蛍光灯の明るい光を好むと話すと、「ドイツでもそうだったよ」という返事が返ってくることがあった。現代のベルリンのお宅を見ていると信じられないけど、終戦後は人々が明るい照明を取り付けたがったらしい。

 これって、敗戦という事実が大きく影響しているんじゃないかと思う。敗戦の苦い思い出から逃れたかったんじゃないのか。明るい光は未来への希望につながっていたのだと思う。

 家具についてもまた同様で、現在の60〜70代ぐらいの人たちは古い家具に全然価値を見いだしていない人が多いという。だからどんどん処分されてしまう。
 それを、古い物が好きな若い人たち(特にベルリンではユーズド家具が大人気)が蚤の市やユーズドショップで買ったりしている。

 ということは戦後生まれが成人して、ようやくインテリアの場面で敗戦国としての記憶から自由になれたということなのかね。

 日本はどうなんだろう。日本って照明は明るい直接照明が好まれるし、家具も新しいのを買いたがるよね。あ、でも日本はユーズド家具そのものが少ないし、日照時間も違うからなあ......。

2022年11月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

アーカイブ

メールください
info@kubomaga.com