2012年5月アーカイブ

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夕暮れ時にライトで照らすときれいなのよ


 ちょい久々の「新居インテリアシリーズ」。
 ベルリンに戻ってきて、わが家のインテリアづくりも再開。まだまだやりたいことがたくさんあるんだから。

 今回はDIYではなく、蚤の市で買ったものについて。
 わが家のキッチン(その様子は発売になったばかりの新刊『ドイツのキッチン・ルール』でご覧いただけます!宣伝でした)にある照明は、天井から下がるライトひとつだった。それはキッチンの真ん中にあるので、作業台を照らすのにはいいけど、窓際の食卓には光は届かない。
 でも、食卓に光はあったほうがいいのよ。料理を照らした方がおいしく見えるでしょ。
 ただし、低い位置から照らせばそれでOK。あまりに高い位置からの光は、のっぺりして人の顔も料理もきれいに見えない。ベルリンのカフェに行くと、低い位置にペンダントライトが下がっていることがあるのは、そういうこと。

 そんなわけで、食卓にも光が必要だなと前々から思っていた。考えられる方法は2つ。天井からのライトのコードを長いものに取り替えて、食卓の上に垂らすか、卓上ライトを食卓に置くか。

 キッチンの天井を見ると、窓際近くに穴が開いている。つまり、以前住んでいた人は前者の方法を取っていたんだと思う。

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左側の穴が窓際近くに開いている

 私はどうしようかな〜、とずっとぼんやり考えてきたけど、この前その状況に終止符を打った。

 蚤の市で見つけたのよ! かわいい卓上ライトを!
 ピンク色で、シェードの高さを調節できるのがポイントが高い。私は毎週のように蚤の市に通っているので、どういう商品が見つかりやすいか、どういうのがレアかが何となくわかる。
 卓上ライトは蚤の市でもいろいろ見かけるけど、こういうかわいいタイプはあまりない。ちょっとだけ考えたけど、買うことにした。

 で、家に持ち帰って食卓に置いてみたら、どうよ、大好きなビルギットさんのクッションとぴったりじゃないの。まるで誂えたみたい。想定外の出来に、もう大喜び。

 ただね、私にはちょっとかわいらし過ぎるかなとも思う。いわゆる女の子っぽいテイストよりも、もう少し素っ気ない感じのほうが自分の好みではあるから。
 以前取材した、ハリーさんというセンスのいい方も「白とピンクじゃバービー人形になる」と言ってたしね。

 こうなったら、キッチンの壁を少しシックな色にペイントした方がいいかな。ちょうど前の住人が残していったコーヒーの染み(いちばん上の写真に写っているでしょ)もあるし......。

 こうして、ひとつの新しい出来事はさらなる出来事を生み出し、新居インテリア計画は永遠に続いていくのです。たとえ新居でなくなっても。

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明るいキッチンは、私の家の中の好きな場所

 私はこれまで、自分の本であとがきを書いたことはありません。書くように言われたこともないですし、書きたいとこだわったこともありません。限られたページ数なので、あとがきを載せるよりも、少しでも多くの写真や記事を載せた方がいいと思っているからです。

 でも発売になったばかりの『ドイツのキッチン・ルール』(誠文堂新光社)は、いろいろ悩みながら作ったので、あとがき代わりにここに書いてみたいと思います。ちょっと長くなります。

 私はベルリンに住み、自分なりにこの地での生活を経験しています。当然ながら、いい面だけではありません。驚いたり、憤慨することもたびたびあります。そういう面も含めて、自分が感じた素敵なこと、なおかつリアルなことを伝えたいと思って書いています。

 それは時に難しいこともあります。
 このクボマガでは好きなように書けますが、本や雑誌は仕事です。購読してくださる読者のみなさんがいらっしゃって、初めて成立するものです。
 みなさんに支持していただける内容でなくてはならない、つまり売れるものでなくてはいけない。だって商品なのですから。

 よく言われることですが、「人は自分の見たいものしか見ない」そうですね。これを本や雑誌に当てはめるなら「見たいドイツしか見ない」のかもしれません。

 日本では「ドイツ=合理的、清潔、質実剛健 ドイツ人=勤勉、実直」というイメージが染みついていると思います。それは間違いではないと思います。
 でも私の感覚で言えば、現在60代以上の方々に多く見られる傾向のような気がします。若い世代はまたちょっと違いますし、私の住むベルリンは、ドイツの地方都市とは大きく異なると思います。
 いずれにせよ、一言で説明できるほど単純な世界など、この世にはきっとないですよね。

 私はこれまで、どちらかというと日本ではあまり知られていなかったベルリンの姿を伝えてきたのではないかと思います。
 それは自分がベルリンに来て、これまで日本で抱いていたイメージとは別の魅力を知ったからです。そしてその魅力は、きっと日本でも支持していただけると思いました。

 私が最初に著書『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)を上梓したとき、「ドイツのインテリアってもっと質実剛健だと思ってたけど、ベルリンって意外にそうでもないんだ」というご感想をたくさんいただきました。
 それが、とてもうれしかった。私が感じたベルリンの魅力を、みなさんと分かち合えたと思いました。

 でも、この本を出すまでにはかなり時間がかかりました。おそらく、本の内容が日本で浸透しているドイツのイメージと違ったからだと思います。
「ベルリン」という地名もパリやロンドンに比べて認知度が低いので、タイトルを「ドイツ」にした方がいいのではないかという案もありました。
 でも私が伝えたかったのは「ドイツ」ではなく「ベルリン」だったのです。ありがたいことに、この本は多くの方に読んでいただけて、出版社の方も私も喜ぶことができました。

 そして、今回のテーマは「キッチン」でした。キッチンは私にとって難題でした。私は別段家事が好きなわけではありませんし、料理が趣味でもありません。
 さらに、「キッチン」といえば、そこに来るのは「ベルリン」ではなく「ドイツ」しか考えられない状況でした。「ドイツの家事術」というジャンルが、日本で確立されているからです。
 本書を買ってくださる方々は、清潔で合理的という、イメージ通りのドイツのキッチンを期待しているに違いないと思いました。それは、これまで自分が手がけたことのない世界でした。

 これまで、どちらかというと王道でない世界を伝えてきた自分が、こんなザ・王道とも言えるテーマを手がけられるのだろうか。
 しかも、家事が得意なわけでもない。読者のみなさんが求めている情報を伝えられるのだろうか。

 悩んだ点は、もうひとつありました。環境の違いです。
 ドイツと日本では食生活が異なりますから、使う食器の数やアイテム、調理後の汚れも違います。
 住環境の違いも大きいと思います。日本(といっても私は東京しか知らないので、偏っているのですが)では収納が大きなテーマですが、それはやはりスペースが狭い場合が多いからでしょう。
 ドイツはもう少し広いことが多いし、賃貸住宅でも壁に釘を打ち付けられるので、自由度が格段に高いです。
 だから、そういう風土・環境の結果生まれたやり方を、そのまま日本で真似するのは非常に難しいと私自身が感じていました。

 それよりは、もっと生活哲学というか、ドイツ人の考え方を伝えた方がいいと思いました。
 ドイツ人の暮らしは、とてもゆとりがあると思うのです。本書で取材した方々も、キッチンはきれいなのに、なんだかとてもゆったりしています。
 そういうゆとりをもたらす考え方や、生活のワンシーンを伝えたいと思って書きました。

 みなさんにどう受け取っていただけたか、不安ではあります。でも、もちろんここに書いた私の意向とは関係なく、みなさんはこの『ドイツのキッチン・ルール』をお好きなように読んで、眺めていただければ、それでうれしいです。

 最後になりましたが、私はドイツやベルリンの情報を伝えることで、日本での暮らしがもっとラクに、楽しく、しあわせに感じられるようになればいいと願いながら書いています。

 これは、どんなテーマでも同じです。自分がベルリンに来た理由(詳しくはこちら)が、日本にいるのがしんどくなったからなので、よけいにそう思うのです。なんだかきれい事に聞こえるかもしれませんが、本当にそう思っています。
 
 すっかり長くなってしまいました。ではそろそろこのへんで。

 ベルリンにて 久保田由希

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 私の新刊『ドイツのキッチン・ルール』が誠文堂新光社より発売になりました。そろそろ書店に並び始めることだと思います。アマゾンlivedoorBOOKSでは既に販売されています!

 この本では、私がドイツの17軒のお宅を訪問し、キッチンの引き出しや冷蔵庫の中をバンバン見せていただきました。
 人のお宅へうかがっても、こんな所まで見ることはなかなかありません。リアルなドイツのキッチンをご覧いただけます。

 日本では、「ドイツは合理的できれい好き」と思われているようです。それは一面では正しいと思いますが、今回取材した方々はお掃除に大半の時間を費やしているわけではなく、「ついでに拭く」という気軽さで、きれいさを保っているんです。
 毎日ってそれなりに忙しいし、気合いを入れて掃除するなんて、少なくとも私にはできません。
 でも取材をしてみて、ちょっとひと拭きするだけでシンクがこんなにきれいに保てるのなら、やらない手はないな〜と思いました。

 日本とドイツでは、食習慣や住環境が異なります。水の質も違います。だから、そっくりそのまま真似すればいいとは思いません。
 でも、考え方や生活習慣を参考にすることはできます。ドイツ人のお宅をのぞき見しながら、ドイツの生活術を感じていただければうれしいです。そして、日本の生活がもっとラクに、楽しくなれば、著者としてこんなにうれしいことはありません。

 本書の最後には、私の新居のキッチンも載っています。
 この本を作っていたときは、キッチンはまだ制作途上(入居時、うちのキッチンにはコンロ1台しかなかったんです。そこからシンクを入れて......詳しくは本書をご覧ください)。撮影日前日に、ようやく食器棚が完成したという、超スリリングなスケジュールでした。でも私にとって、とても気持ちのいいキッチンができました。

収録内容
・写真たっぷり!隅から隅まで覗いたドイツのキッチン17軒
・ゼロから作り上げた私のキッチン
・ドイツ人愛用のキッチンツール
・ドイツ人愛用の食器いろいろ
・簡単でおいしいお料理レシピ
・みんなどうしてる? 収納の工夫
・ゴミ箱はどうなってる?
・便利でグッドデザインな家電
 ......など

 ものぐさな私でも取り入れ始めた、キッチンの工夫をご紹介しています。
 ドイツに興味をお持ちの方、キッチンをきれいにしたい方、一般宅を覗いてみたい方、ぜひともお買い求めください!

『ドイツのキッチン・ルール』
誠文堂新光社
定価:1500円+税
判型:235×182mm(写真が大きいので満足感あると思います!)
144ページ
ISBN:978-4-416-81265-5

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新品家具は、いまいちうちのインテリアと合わないんだよねえ

 ベルリンに戻ってはや1週間。またまたリサーチや取材が始まって、焦ったり急いだりという毎日。

 そんな合間に、改装途中だった新居のこともちょろちょろと再開。実は必要に迫られて近いうちに買わなければならない家具があり、普段は新品を買わない私だけど、珍しく家具店に行ってきた。

 当たり前だけど新品家具はどれも高くて、もうひとつ私の好みにも合わず、「やっぱ家具店に私のほしい物はない......」と帰ろうとしたところ、ちょうど閉店のアナウンスが。
 店内はもう十分見て回ったのでフロアの出口へと向かったら、すでにそこには店員さんが自分のバッグを抱えて私が来るのを待ち構えていた。そして、私がフロアを出るやいなや、速攻で鍵をかけてそのまま私と一緒に退社。

 いいよなあ、ドイツはこれでOKだから。
 確か日本のデパートの閉店アナウンスは「ただいま閉店の時間になりましたが、お買い物中のお客様はごゆっくりとご覧ください」みたいな感じじゃなかったっけ? 

 お客としてドイツにいると、サービスはいまいちだわ、店員が感じが悪いときはあるわで満足感を得ることは少ないんだけど、いったん働く側に回ればとってもラクそう。私もドイツに生まれたかった......とたま〜に思うことがある、たまにね。

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右奥がカスターニエンの木

 私は無事にベルリンに戻りました。

 1ヵ月ぶりに戻ってきて思ったのは、ベルリンは本当に緑が豊かだなあということ。街中の街路樹や公園は緑がもくもくと繁っていた。

 同じひと月という時間でも、冬の間と、4月から5月にかけてでは、進み方がまったく違う。私が留守にしていたひと月の間に、木々は芽吹き、あっという間に繁り、街は全然違う景色になっていた。

 1月から住みだした現在の新居。当たり前だけど、この季節をここで過ごすのは初めて。日本から帰ってきたら、窓からの眺めがいきなり変わっていて驚いた。

 キッチンからのお気に入りの眺めも、すっかり様変わりしていた。これまでは裸の枝が見えていただけだったのに、葉が繁って向かい側の家の窓が見えなくなっている。
 そして遠くに見えていた木は、カスターニエン(マロニエ)だということがわかった。白い花をたくさんつけている。

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これが約ひと月前

 キッチンの食卓に座って、春の景色を眺めながらごはんを食べていると、それだけでうれしくなる。ちょっとワインでも開ければ、もっとしあわせになる。

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そしてタマネギも芽吹いていた

 なんなんだろう、この感じ。東京で同じことをしても、こういう気持ちにならない。景色が違うからなのか。東京にもっと緑があれば、もっとしあわせな気持ちになれるのか。

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じゃあまた

 一時帰国も丸1ヵ月となりました。そろそろこの辺でベルリンへ戻ります。

 東京とベルリンなら、いまの私にはベルリンの方が心地よく暮らせる。環境が許すうちは、ベルリンにいたい。

 インターネットがあるから、離れててもコミュニケーションは取れるけど、やっぱり実際の距離は大きい。日本とヨーロッパがもっと近かったらいいんだけど。

 ベルリンはきっともう若葉がきれいなんだろうな。そういえば、新居の整備もまだ途中だった。帰ったらやることがたくさんある。また日常生活が戻ってくる。
 まあ、どこにいても日常は続いていくわけだけど。

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中央に見えるレンガでできたものが薪窯

 私が2000年にケルンにホームステイしていたとき、ドイツ語学校で知り合った友人が開いたパン屋さんがある。今年でオープン9周年。どうしてるかな〜と、久々に行ってみることにした。

 場所は山梨。レンタカーを借りて中央高速を走れば2時間ぐらいで到着......のはずが、この日は4連休の初日。のろのろ運転で、結局東京を出て着いたのは5時間後。
 そしてパンは......売り切れてた......。

 しかし、久々に友人ご夫婦に会えてよかった。
 ご夫婦が営むパン屋さんは山小屋風の造りで、週末限定で薪窯で焼くパンも提供している。
 今日はライ麦を使ったドイツ風のロッゲンブロートがあり、試食させてもらった。ドイツ、特に北部ドイツでは、ライ麦パン(小麦粉とブレンドしているのもある)が多い。一気にドイツに近づいた気分。

 お店ではカフェスペースもあるので、パン好きの方、ドイツパンに興味がある方は、この連休にぜひ行かれてみてはいかがでしょう。渋滞分の時間の余裕を持ってお出かけください。
 電話によるパンの予約も可能です。「クボマガで見た」とおっしゃらなくて結構です、はい。

バックハウス・インノ
山梨県北杜市大泉町西井出字和田9177
Tel./Fax 0551-47-3388
営業時間:11:00〜18:00
定休日:火・水

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